資源国通貨豪ドル(AUD)の通貨の特徴について

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FXトレーダーに人気の高い通貨の一つである豪ドルについて解説します。

 

豪ドル(AUD)はオーストラリアの通貨であり、日本人のトレーダーにとって、「AUD/JPY」の通貨ペアでおなじみです。

FXでの豪ドルのイメ―ジと言えば、以前は「高金利通貨」でした。

金利である日本円と高金利である豪ドルとの金利の差によるスワップ金利をねらっているトレーダーが多かったのですが、現在の豪ドルは以前のような高金利通貨ではなくなってしまったので、スワップ金利目的の取引をするトレーダーは、昔に比べだいぶ少なくなりました。

しかし、スワップ金利だけが豪ドルの魅力ではありません。豪ドルは時差の関係もあり東京時間でも取引がしやすく、ある程度の値動きがあります。デイトレでも中長期の取引でも取引しやすい通貨と言えます。

日本人FXトレーダーに人気のある通貨の1つである豪ドルについて説明します。

比較的よく動く豪ドル

豪ドルは、米ドルに比べてよく変動する通貨です。ポンドほどの激しい変動はないものの、よく変動するため、デイトレーダーにも人気がある通貨です。

例えば、ドル円が1日平均0.76%ほどの変動率なのに対し、豪ドル円は1日平均0.95%ほどの値動きとなります。ポンド円の値動きが1日平均0.98%ほどであることを考えると、ドル円は変動率の大きな通貨ペアであると言えます。

「豪ドル円がポンド円ほど動いているようには思えない」と思った方もいると思います。

値動きを%ではなく、円ベースで見た場合はそう思えるでしょう。なぜなら、豪ドル円のレートが1豪ドル75円程度なのに対し、ポンド円は1ポンド140円程度なので、仮に1%の値動きがあったとすると、豪ドル円の1%は75銭となります。

それに対し、ポンド円の1%は1.4円になるため、変動率が大きくなってしまうのです。

そのため、豪ドル円が1日平均0.95個%動くのであれば、現在のおおよそのレートで換算すると1日71銭ほどの値動きをすることになりますが、ポンド円の場合は1日平均0.97%の値動きなので、1日1円35銭ほど動くことになるのです。

こうした理由から、値動きを円ベースで見た場合は、豪ドル円はそれほど大きく動いていないように思えるかもしれませんが、%で見た場合は、よく変動する通貨ペアであると言えるのです。

実際にチャートを見て比べると、米ドル円と豪ドル円とでは変動するスピードが違い、多くの場合は、豪ドル円の方が動きが速いことがわかると思います。

オーストラリアの市場が開始される時間は日本時間の朝7時(夏時間は日本時間の朝6時)、終了する時間は日本時間の午後4時(夏時間は日本時間の午後3時)です。

豪ドルは、オーストラリアの市場が開始している東京時間はもちろん、ロンドン時間やニューヨーク時間でもよく変動します。

オーストラリアと日本との時差は2時間(夏時間は3時間)しかなく、東京時間にオーストラリアの経済指標が発表されるため、東京時間でも大きな変動が見込める通貨となります。

そのため、東京時間を中心に取引したい日本人トレーダーにとっては、取引しやすい通貨であると言えます。

豪ドルは高金利通貨?

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(2018年9月)


豪ドルといえば、かつての高金利通貨というイメージを持つ人が多いと思います。しかし、冒頭でも記載したように、現在の豪ドルは高金利通貨と言えるほどの金利ではなくなってしまいました。

オーストラリアの政策金利は、10年程前は7~7.25%と高金利でした。1990年頃の政策金利は15%~17%と、より高かったのです。しかし、リーマンショックが発生したことにより、そのあおりをオーストラリアも受けてしまいました。

経済を下支えするためにオーストラリアは財政改革を行い、オーストラリアの中央銀行のRBAはインフレの抑制から一転して利下げを行いました。これによって、オーストラリアの政策金利は、それまでの7.25%から7%への引き下げられました。

その後も金利引き下げは続き、2008年10月には一気に1%引き下げて6%の政策金利としました。ここから引き下げはほぼ毎月行われ、今まで高金利通貨として人気を集めていた豪ドルは、この時から大きく売られることになってしまいました。

特に、2008年10月に実施された1%の引き下げは市場にネガティブに捉えられ、豪ドルは大幅に売られることになりました。

その結果、それまで105円前後で推移していた豪ドル円は、金利の引き下げを受けて急劇に豪ドル安が進み、55円付近まで下落してしまいました。

こうした経緯のある豪ドルの政策金利ですが、2018年2月には1.5%となってしまいました。メキシコの7.75%トルコリラの24%に比べるととても低い金利であり、米国と変わらない政策金利になってしまいました。

 

豪ドルが今より高金利だった時は、低金利の円で資金を借り入れて、円を売って高金利の豪ドルやオーストラリアの株式等へ投資する円キャリートレードが盛んに行われていました。

しかし、現在のオーストラリアの政策金利は昔の様に高金利ではないため、このような動きは少なくなってしまいました。

豪ドルは資源価格の影響を受る

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オーストラリアは資源国といえます。金や石炭、鉄鉱石などの資源が豊富にあり、輸出量も多い特徴があります。

例えばオーストラリアの株式市場は、市場の規模の割に業種が偏っていて、資源エネルギー関連株と銀行株だけで全体の約75%を占めています。日本と違い、自動車や機械、IT関連といった高付加価値の業種はとても少ないのが特徴にあげられます。

また、外務省の情報によれば、2015年から2016年のGDP産業別のシェアにおいては、鉱業が9.5%となっていて、金融保険業の9.5%と並ぶ2本柱になっています。

このような事から、同国は商品価格に景気が左右される傾向があるといえます。資源価格が上昇した際にはオーストラリアの景気は上向き、需要も増えます。

そのため、物価も上昇するのですが、あまりに行き過ぎるとインフレになってしまいます。それを抑制するため、オーストラリアの政策金利は高水準になっていたのです。

多くの資源の中で、豪ドルが最も影響を受けやすい資源は鉄鉱石であります。

外務省のデータによると、同国の主要貿易品目のうち、輸出は鉄鉱石が15.5%、石炭が11.7%を占めていて、鉄鉱石の割合がとても高いことが分かります。このことから、豪ドルは鉄鉱石価格や石炭価格との相関関係が高いと言えます。

鉄鉱石価格や石炭価格等が上昇→オーストラリアの景気が良くなる→豪ドルが買われるといった流れができるため、これら資源価格の価格上昇はオーストラリア経済にとってメリットとなります。

そのため、鉄鉱石や石炭価格の上昇は、豪ドルが買われる要因になるということを覚えなくてはいけません。

豪ドルは中国経済の影響を受けやすい

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上記で、豪ドルは石炭や鉄鉱石の輸出が多いということを書きましたが、その輸出先には中国が多くなっています。オーストラリアの最大の貿易国は中国なのです。そのため、オーストラリアは中国経済の影響を受けやすい傾向があります。

中国は自国で鉄鉱石を産出していますが、近年の急速な経済成長によって自国で算出する鉄鉱石や石炭だけではまかないきれなくなってきました。そのため、鉄鉱石や石炭を輸入しています。

また、鉄鉱石に関していえば、自国のものに比べ、オーストラリア産やブラジル産のものの方が鉄の成分が多い事も、他国から鉄鋼石を輸入する要因となっています。

オーストラリアの主力の輸出品である鉄鉱石の需要は、バルチック海運指数から推測できます。

バルチック海運指数というのは景気や商品価格の先行指標で、鉄鉱石や石炭等の商品を運ぶためのドライカーゴを運搬する「外航ばら積み船」の運賃や、用船料のヒアリングから算出されています。

バルチック海運指数が高ければ高いほど、鉄鉱石や石炭、穀物などの商品の需要が世界で高まっている、と考えられます。

そのため、この数字は世界経済や商品価格の先行指標として考えられているのです。このバルチック海運指数から、オーストラリアの中国への鉄鉱石や石炭の輸出動向を推測することができます。

なお、中国の経済指標の中には、豪ドルに大きな影響を与えるものもあります。その中でもGDPや中国製造業PMI、消費者物価指数、固定資産投資、小売売上高等が特に影響を与えるので、これらの経済指標の発表時の変動は注意してください。

豪ドルに影響を与えるものは

先ほど、豪ドルに影響を与えるものとして中国経済の動向を挙げましたが、それ以外にも豪ドルに影響を与えるものがあります。

例えば、オーストラリアの経済政策や金融政策は、豪ドルに大きな影響を与えるます。すでに書いたように、オーストラリアはリーマンショック後の景気改善策として利下げを行いました。

それにより、世界的な経済不況の間も、中国経済の成長の恩恵を受けることで景気回復に注力することができました。鉄鉱石をはじめとした中国への輸出の伸びや資源価格の高騰によって、オーストラリアは他の先進国を上回るペースで景気を回復してきました。

しかし、今は中国の景気減速の影響を受け、資源価格が下落しています。その結果、オーストラリアの経済も停滞し、実質経済成長率が下がってきているのです。

現在オーストラリアが悩んでいるのが、物価上昇率の伸び悩みと賃金上昇率の低迷だといえます。

オーストラリアが過去最低水準の金利を続けている理由として、物価上昇率が、オーストラリアのインフレターゲットである2%~3%に届かないという点が挙げられます。

また、賃金上昇率の低迷は消費の低迷を招きますが、オーストラリアの消費者物価指数も低下傾向にあるのです。

オーストラリアが以前のような高金利に戻せないのは、このことが原因となっていると思われます。

オーストラリアでは、景気を押し上げるため、インフラ投資計画を発表していますが、この効果が見え、賃金上昇率や消費者物価指数から回復の兆しが見えてくれば、市場はポジティブであると判断して豪ドルは買われることになります。

また、前述したように、中国経済もオーストラリアの経済に影響を与えるため、中国の景気支援策の効果が確認でき、資源価格の上昇につながれば、豪ドルに買われ、レートが上昇すると考えられます。

これ以外に、オーストラリアが利上げに転じた場合も、豪ドル買いにつながると考えられます。

 

豪ドルを取引する際に注目したい指標

オーストラリアの経済指標で重要ものをあげます。

 

これ以外にも、その時に注目されている経済のテーマによっては注目度が高くなる経済指標もありますので、オーストラリアのニュースに注意を払うと良いと思います。